2014年2月20日木曜日

インドネシアの特許制度について

Q.インドネシアに進出して、現地で商品の生産および販売を行う予定です。そこでインドネシアの特許制度について、日本の特許制度と比較しつつ教えてください

A.
1.インドネシアの概要
(1)インドネシアは、総面積が約192万km2、総人口が約2億3千万人、首都はジャカルタ、公用語はインドネシア語です。日本の特許法等に相当する法律として、2001年8月1日施行の特許法があります。インドネシアには、日本のような無審査の実用新案制度はありませんが、審査を行う小特許制度があり、また意匠制度および商標制度もあります。
(2)インドネシアが加盟している知財に関連した主な条約として、パリ条約 、PCT条約、ベルヌ条約等があり、WIPOやWTOにも加盟していますが、マドリッド・プロトコルには加入していません。特許出願の多く(約90%以上)は、外国(米国、日本等)からの出願です。


2.特許出願の手続
(1)出願書類
 特許出願に必要な書類は、願書、明細書、クレーム、必要な図面および要約を公用語であるインドネシア語で提出する必要があります。この点は日本と同様です。但し、インドネシアでは、英語でも出願できますが、この場合、その出願日から30日以内にインドネシア語による翻訳文を提出する必要があります。
(2)その他の書類
 ①委任状
  現地代理人を使う場合、出願人が署名した委任状が必要となりますが、認証は不要です。この点は日本と同様です。
 ②譲渡証
  出願人が発明者でない場合には、譲渡人および譲受人が署名した譲渡証が必要となりますが、この場合も認証は不要です。なお、日本では出願時に譲渡証は要求されません。
 ③優先権証明書は、日本と同様、優先日から16月以内に提出しなければなりませんが、1月単位で延長が認められます。その言語が英語以外の場合、フロントページの英訳文を優先権証明書と共に提出します。


3.特許出願の審査
(1)特許要件
 発明が不特許事由に該当せず、新規性、進歩性および産業上の利用性を有することが要件です。概略は基本的に日本の特許要件と同様です。なお、インドネシアで認められる小特許は、進歩性を問わない点で、日本の実用新案とは異なります。
 ①不特許発明:次の発明は特許を受けることができません。
  ・芸術的な創造物
  ・発見や単なる情報の呈示
  ・科学的な発見や理論、算術的方法、コンピュータプログラム自体
  ・人体および動物に対する検査、処置、治療方法または手術方法等
・法規、宗教規範、公序良俗等に反する場合等
 ②新規性
  ・公知、公用および刊行物公知により新規性を喪失します。
・基準は出願日(優先日)であり、文献公知は世界主義であり、公知公用は国内主義です。
  ・新規性喪失の例外規定もあり、公知日から6月以内(試験・研究等の場合)または12月以内(外国博覧会出品等の場合)に出願することが条件です。
 ③進歩性
 当該技術に関する通常の専門知識を有する者にとってそれ以前には予期し得ない事項から成る発明は、進歩性を有するとされます。
 発明が予期し得ない事項から構成されるものではないという判断は、特許出願をした時(優先権の主張を伴う場合には最初の出願がなされた時)現に存在した専門知識を査定することにより行われます。
 ④産業上の利用性
 出願書類に説明された態様で産業において実施され得る発明は産業上利用可能なものとされます。

(2)方式審査・出願公開
 ① 願書・明細書等が提出されると特許出願は方式審査の対象とされます。出願書類の不備や出願費用の不納には補正命令がなされ、3月以内に瑕疵が治癒しないと、出願は取下擬制されます。
 ②出願書類に不備がなく、費用が適正に納付されると、日本の場合と同様に、出願日(優先日)から18月経過後、出願公開されます。なお、手数料を納付することにより早期公開も可能です。
 ③出願公開されると、公開日から6月間、異議申立てが可能です。
 ④日本で認められる補償金請求権による仮保護はありません。

(3)実体審査
 ①出願人は、出願日から36月以内(小特許の場合は出願日から6月以内)に審査請求をすることにより、特許要件に係る実体審査を受けることができます。その納付をしない場合、出願は取下擬制されます。なお、日本では、出願日から3年以内に審査請求料を納付しなければ取下擬制されます。
 ②審査官は、出願人に対して、対応外国出願の調査報告書や審査結果を提出するよう要求することができます。日本にはこのような制度がありません。
 ③ 特許要件が満たされていないと審査官が判断したとき、応答期限(通常3月間)を指定して拒絶理由が通知されます。これに対して出願人は意見書や明細書等の補正書を提出することができます。拒絶理由が解消していないと判断されると拒絶査定がなされますが、出願人はその通知日から3月以内に審判請求をすることもできます。
  一方、審査の結果、特許要件が満たされていると判断された場合、特許付与通知がなされ、特許付与料金を納付すると、特許は登録され、特許権が発生します。これらの概略は日本も同様です。

4.PCT出願の国内移行手続
 優先日から31月以内(手数料の納付により32月まで延長可能)に、国内移行の請求書と国際出願の明細書等の翻訳文を提出する必要があります。日本では、優先日から30月以内に国内書面を提出すれば、翻訳文の提出には2月の特例期間が付加されます。

5.特許権の存続
 ①存続期間は、出願日(国際出願日を含む)から20年間です。この点は日本と同様です。
 ②年金は、出願日から起算して納付します。特許日から1年以内にそれまでの累積年金を一括納付し、それ以降は毎年納付(納付期限は対応する出願日)する必要があります。 日本では、特許査定後に3年分を一時納付した後、登録後から毎年納付する必要がありますが、特許前に対する累積年金(いわゆる維持年金)の支払いは不要です。

6.特許後の手続
  日本と同様な無効審判制度はインドネシアにはありません。インドネシアで特許を取消すには、商務裁判所に提訴する必要があります。


 その他、外国特許制度の詳細および具体的な事案についての判断は、専門家である弁理士等にご相談されることをお勧めします。
以上
(特許業務法人SANSUI国際特許事務所 代表弁理士 森岡 正往)

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